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Assassins

  7 月 8 日に元首相・安倍晋三が暗殺された。日本で首相級の政治家が殺害されたこと(同様の事件が起きたのは第一次世界大戦前の 80 年前に遡る)、銃規制が厳しいこの国で犯人が自作した銃による凶行だったことに驚いた。 日本中に漂う不穏な空気感のなか私はアメリカ合衆国大統領の暗殺者・暗殺未遂者たちが登場するソンドハイムのミュージカル『 Assassins 』のことを思い出した。 1990 年にオフブロードウェイで初演されたミュージカルで 1970 年の『 Pacific Overtures/ 太平洋序曲』に続くソンドハイム(作詞・作曲)とジョン・ワイドマン(脚本)の共同制作 2 作目に当たる作品だ。実を言うと私はそれまで本作について有名な劇中曲「 Unworthy of Your Love 」を聴いたことがある程度で内容も詳しく知らなったため手始めにオフブロードウェイ初演キャストのアルバムを聴いてみた。 何度か聴いてみると私はどの楽曲も非常にキャッチーで聴きやすいことに驚いた。暗殺者たちのミュージカルとはまるで思えないほど陽気なメロディに溢れているのだ。その曲と言えば暗殺者が一堂に集まって不平不満を語る合唱曲、絞首台や電気椅子での処刑を待つ凶悪犯の独白といったように恐ろしいものばかりなのだが思わず一緒に歌いたくなってしまう。ソンドハイムの楽曲は基本的に中毒性が高いのだが『 Assassins 』はより高く感じられ、私は取り付かれたかのようにアルバムを繰り返し聴くことになった。 そして私はアルバムを聴きながらソンドハイムの歌詞とワイドマンの戯曲を読み進めていった。そこには暗殺者たちの苦悩が生々しく描かれ、明るいメロディとは裏腹に重苦しい雰囲気に満ちていた。この明暗の組み合わせにも非常に惹かれていった。またアメリカン・ドリームの裏側や銃の恐ろしさを描いた世界観を知れば知るほど現代の日本にも通じるものが多いことに気付かされ、ますます『 Assassins 』の虜となった。 なぜソンドハイムはこんなに親しみやすいメロディを使ったのか? ソンドハイムとワイドマンが本作で描きたかったことは何だったのか? そんな疑問を抱くことになった私は様々な文献に目を通し二人のインタビュー動画も見ることになった。そこで得た知識を基に『 Assassins 』の魅力について書き残