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Sondheimが語った『West Side Story』制作の逸話

 スティーヴン・スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』がいよいよ日本で明日 2 月 11 日から公開されるので楽しみだ。先日購入したソンドハイムの自伝『 Finishing The Hat 』で本作の制作秘話を読んだら興味深いことが沢山書かれていたので自分の備忘録のために書き留めておこうと思う。    『ウエスト・サイド・ストーリー』(以下 WSS )は 1957 年に初演、ソンドハイムがブロードウェイで初めて作詞を手掛けたミュージカルだ。彼が一緒に仕事をしたのがレナード・バーンスタイン(作曲)、アーサー・ローレンツ(脚本)、ジェローム・ロビンス(演出・振付)、そしてハロルド・プリンス(共同プロデューサー)。当時の彼らの年齢は 20 代半ばから 30 代後半。まさに若き才能が結集した作品だった。(そういえば日本の新聞社のソンドハイム死亡記事で彼があたかも『 WSS 』の作詞・作曲を手掛けたかのように書かれていた《私の友人もそう思い込んでいた》が、本作の作曲家はレナード・バーンスタインである)。   ■ 作詞より作曲を好んだソンドハイム   10 代の頃からオスカー・ハマースタインという偉大な指導者に恵まれ、大学では音楽を専攻し、その技術を着実に磨いていったソンドハイムは常に作詞よりも作曲の方を好んでいたそうだ。これには少し驚いた。作曲の才能はもちろん言うまでもないが、まさに言葉の魔術師と呼ぶべき作詞の比類ない才能も彼にはあったから。  実は『 WSS 』が誕生する前の 1954 年、彼は『 Saturday Night 』というミュージカルの作詞・作曲を既に手掛けていたのだが、プロデューサーの予期せぬ死により本作は不幸にもお蔵入りになってしまう(それ故ソンドハイムのブロードウェイデビュー作は『 WSS 』ということになる。あまり存在を知られていない『 Saturday Night 』だが良曲がとても多い。これについてはまた機会があれば書きたい)。  その後『 Saturday Night 』の歌詞を気に入ったローレンツから『ロミオとジュリエット』のミュージカル版=『 WSS 』の作詞をやらないかという話が舞い込む。とりあえずバーンスタインの家でオーディションを受けたソンドハイムだったが、前述した理由で作詞のみの仕事を引き受けることには迷いがあった。そんな彼を